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1-3 呼び出し

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 校舎やグラウンド脇の屋台通りのにぎわいが嘘みたいに、校舎裏は人気がなくて、切り取られた別世界みたいだった。


 おかげで、悠人の姿はすぐに見つけられた。手持ち無沙汰な感じで、私に背を向けて立っている。片足に重心をかけた立ち方をしてて、すらっとまっすぐした立ち姿のタクとはやっぱり違う、なんてつい比べてしまう。


 私はその背中にそろそろと近づいた。


「わっ!」


 我ながらベタな驚かせ方だって思ったけど、思いのほか悠人はビクついてくれた。勢いよくこちらを振り返り、私の怪獣マスクに冷たい視線を向けてくる。


 悠人はそのまま私を無言で観察し、手にしていた綿菓子を口に含んだ。呆れきってるようなそのまなざしに、子どもみたいに脅かした自分が恥ずかしい。


「お前、なんでそんなもんかぶってんだよ」


 ようやく投げかけられた言葉も、完全に私を小バカにした雰囲気だ。


「だ、誰のせいで……」


 悠人は私の怪獣マスクをその右手で引っ張って取った。長い髪が一緒に引っ張られ、ぼさぼさになってしまう。


「誰のせいでって、なんだよ?」


 髪を整えていた私は悠人に顔を覗き込まれ、つい一歩たじろいだ。


「ほら、言ってみろよ?」


「ゆ、悠人が……」


 ちなみに、自分のことを名前で呼べと言ってきたのは悠人だ。その方が『ぽい』だろ、だそうだ。まだ慣れない。


「あんなこと、するから」


「あんなこと?」


 自分でも顔が赤くなってしまうのがわかる。そんな私を、悠人の方はニヤニヤしながら見ている。


 ちくしょう、わかってて言ってるなこいつ!


「何、もしかして、ファーストキス?」


「そんなわけないし!」


 とうとう悠人はケタケタ笑い出した。


 あぁぁ、ホントにホントにムカつく!


 怒るなよ、なんて悠人は目元の涙を拭う。誰が怒らせたと思ってるんだ。


「あれくらいしときゃ、『付き合ってる』って噂、すぐに広がるだろ」


「おかげさまで? 私はあなたのファンから殺されそうだけど?」


 悠人はまだ笑ってる。なんかもう、腹が立つを通り越して呆れてきた。


 悠人が何をしようが、それは私に理解できるものじゃない。そうだ、そうなんだ、と今さらながら再確認。それはこのバカげたゲームを悠人が提案してきたときから、わかってたことだった。流されてつい乗っかっちゃった私がいけない。


 ――それに。


 周りの目なんて気にしてたら、きっとこれから身がもたない。



 私たちは、『付き合ってる』んだ。