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9話 Their Reflection

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 今日は双子と遊ぶ約束をした日。


 双子はいつも様々な無茶振りをしてくるため、正直行きたくない気持ちの方が強かった。


 しかし先日のイヤリングの一件で、春陽はるひくんに借りがあるのも確かだ。そこで今日は、その恩を返すために、と自分を奮い立たせて家を出たのだが―――。



「……来ない」



 既に待ち合わせ時間を二十分以上過ぎているのに、双子は一向に現れない。


 場所を間違えたかもと思い、昨日送られてきたメールを見返す。やはり、“駅前の広場、噴水の前”と書かれている。この広場に噴水は一つしかないし、私が間違えているはずはなかった。


 まさか、どこかに隠れてこちらを見ているのではないだろうか。私がどんな反応をするのか見物して、陰で笑っているのでは。あの双子のことだ。やりかねない。


 疑心暗鬼になり、周囲を見渡した時だ。手の中で携帯が震え、着信を告げる。双子からだった。



「もしもし?」


『もしもし、春翔はるとだけど。ハルが急に熱出しちゃってさ、今日遊ぶのはなしな!』


「え…、春陽くんが? 大丈夫?」


『………あ、わりっ。ちょっと今忙しいから切る! それじゃ!』



 私の返事を待たずに、通話が切れる。最後にガシャン、と嫌な音が聞こえたが、大丈夫だろうか。心配になるものの、私にできることはなさそうだ。


 看病してくれる人はいるのだろうか。そう考えて、私が双子のことを何も知らないことに気がついた。


 双子だけではない。れいさんや逢坂おうさかさん、潤賀うるがさんのことも、何も知らない。マンションで目にする姿は、あくまで彼らの生活の一部なのだ。彼らは普段、どこでどのような生活をしているのだろうか…。


 疑問は尽きることがないが、このままここにいても仕方がない。私は来た道を引き返す。ちょうど学校で使うノートを切らしていたところだし、帰る前に繁華街をのぞいておこう。



 一通り買い物を終え、私は家に向かって歩き始めた。


 まだ正午にもなっておらず、一日はまだまだ長い。本当なら夕方まで双子につき合う約束だったので、家事は昨日の内にほとんど済ませてある。あと半日、何をして過ごそう。


 そんなことを悶々と考えていた私は、目の前を猛スピードで横切った影に、ピタリと足を止めた。


 ―――え、今のって……。


 反射的に顔を向けると、人混みを駆け抜ける金髪の人物。その細身で小柄なシルエットには、確かな見覚えがある。


 彼が近くの薬局に飛び込んでいくのを見て、思わずあとを追う。市販薬が並ぶ棚の前で、彼はかごを片手に立っていた。



「…春翔、くん?」



 名前を呼ぶと、彼はビクリと肩を揺らして振り返る。そして私の顔を見るなり、大きな瞳をぐらりと揺らした。



「か、叶美かなみ…」


「ど、どうしたの!?」



 私は今にも泣き出してしまいそうな彼に駆け寄る。さすがに泣いてはいないものの、その表情は硬く、真っ青な顔をしている。


 一瞬、熱を出したという春陽くんかと思った。けれど、私の呼びかけが正しかったという証拠は、彼の口から発せられた。



「叶美、どうしようっ。ハルの熱が下がんなくて…、さっきからずっと意識ないままで…。俺、一生懸命看病しようとしたけど、こんなこと初めてで、どうしたらいいか…!」



 いつもの強気な物言いはすっかり姿を消し、春翔くんは私にすがるように言う。


 春翔くんの切迫した空気に驚き、状況を把握しようと口を開いた。私まで冷静さを欠いてしまってはだめだ。



「落ち着いて、春翔くん。春陽くんは朝から熱があるの? 熱は何度くらい?」


「そう、朝から。熱は…、分かんない。体温計、家にないし」



 かごを持つ春翔くんの手が震えている。そばにあったものを手当たり次第入れたのだろうか。かごの中には胃薬や便秘薬など、必要なさそうなものまであった。



「えっと…、じゃあ体温計と解熱剤、それから冷却シートも。あとは、一応咳止めと鼻炎の薬くらいかな。春翔くん、とりあえずこれだけ買っていこう。もし熱が凄く高いようなら、その時は病院に連れて行くことになるけど」



 最低限のものだけ選んで言うと、春翔くんはこくりとうなずく。



「私コンビニで飲みもの買って来るね! あ、おかゆの材料とかあるかな? 春陽くんの目が覚めたらつくろう」


「ちょ、待った!」



 手首をつかまれ、私は踏み出しかけた足を止めた。



「俺が買うからいいって。それに…つくろうって、何? 家に来るつもりなのかよ」


「え…。そのつもりだったけど、だめかな?」


「いや、だめっていうか…。お前がそこまでする理由なんてないだろ」


「だって、二人のこと放っておけないよ」



 寝込んでいる春陽くんが心配だし、これほど取り乱している春翔くんを見ておいて、このまま帰るなんてできない。


 春翔くんは私の言葉を聞いて目を見開き、困惑した表情を浮かべる。それから何か言おうとして口をつぐみ、たった一言、「分かった」とつぶやいた。




 双子の暮らすコーポは、繁華街からそう遠くない住宅街にあった。白い外壁からは年季が感じられるが、際立って古いというわけではなさそうだ。


 階段を駆け上る春翔くん。彼は二階の左端にあるドアを開け、一目散に中へ入って行く。私は開けっ放しのドアから中を覗き、「お邪魔します」と玄関に上がった。


 玄関からすぐのところにキッチンがあり、何かが焦げたような臭いがしていた。臭いの元はコンロに置いてある鍋で、ふたを開けると真っ黒になったご飯らしきものがある。もしかすると、春翔くんはおかゆをつくろうとしていたのかもしれない。


 奥に行くとリビングがあり、その隣の和室に春翔くんがいた。布団で眠っている春陽くんはぐったりとしていて、春翔くんの呼びかけに反応する様子はない。



「三十八度四分って、これ高いのか?」



 体温計を手にした春翔くんが私に尋ねる。



「ちょっと、高めかも…」


「っ、酷いのか!? どうすればいいんだよ叶美っ。俺、ハルがいないと…」


「大丈夫だから落ち着いて。この時期だからインフルエンザでもないだろうし、とりあえずは解熱剤を飲ませて様子をみよ?」



 私の肩を掴む春翔くんの手を外し、解熱剤の箱を袋から取り出す。春翔くんは酷く焦っている様子だったものの、急いでコップに水をついで来てくれた。


 私が春陽くんの頭を持ち上げようとすると、「俺がやる」と春陽くんの枕元に座り込む。そして苦しそうな春陽くんを見て顔を歪めながらも、薬を水と一緒に飲ませた。


 私は冷却シートを春陽くんのおでこにはり、額に浮かぶ汗をふくため濡らしたタオルを持って来る。見たところ病院に行くほどではなさそうだし、あとは様子見だ。


 暫くすると薬が効いたようで、熱は少し下がってきていた。それに安心したのか、春翔くんはへなへなとリビングに座り込む。そうとう気を揉んでいたのだろう。


 私も春陽くんが回復に向かっていることに胸を撫で下ろし、春翔くんの隣に座る。青いじゅうたんと円形のテーブル、テレビしかないシンプルすぎる部屋だった。



「……ありがと」



 春陽くんの規則的な寝息だけが室内を満たす。そんな中、聞き逃してしまいそうなほど小さな声で、春翔くんが言った。



「え!?」


「…何その反応」


「いや、だって…」



 春翔くんが、あの春翔くんが“ありがとう”なんて…!


 悪魔のごとき双子の口から出たとは思えない発言に、私は何と返していいか分からず目を丸くする。


 私の態度が気に入らなかったのか、春翔くんはじとりとこちらをにらみつけてきた。



「叶美のくせに生意気なんだよ。素直に“どういたしまして”って言えないのかよ。ほんっとに可愛くないな」


 春翔くんには言われたくない。心の中でそうつぶやき、私はむすりと口を尖らせている春翔くんを見る。


 …だけど、いつもの強気な姿勢が戻ってきてよかった。薬局で見た時は、まるで別人かと思うほどに取り乱していたのに。そう思って微笑むと、ベシッと頭を叩かれた。



「っ~」


「何笑ってんだよ! その顔超ムカつく!」


「い、痛い痛い! ごめ、ごめんなさいっ」



 あろうことか拳で腕を殴ってくる春翔くん。力はかなりセーブしているようだが、しっかり痛みを感じる程度には強い。


 何度も謝ってようやく拳は止まり、春翔くんは「フンッ」とそっぽを向いてしまった。


 こわごわと顔を上げた私は、その頬がわずかに赤いことに気づき、瞬きを繰り返す。


 ―――もしかして照れてる、とか。


 すぐにそれはないと首を振る。しかし、口元を手で隠して私を見ようとしない春翔くんは、確かに照れているように見えなくはない。だとすれば、今の唐突なパンチは照れ隠しということになるのだろうか。



「春翔くん…?」


「…何だよ」


「こっち向いて?」


「…やだ」



 どうしよう。何だか凄く春翔くんが可愛い。


 いや、もちろんそんなこと口に出せない。けれど、あの双子を可愛いと思う日が来るなんて、想像すらしなかった。きっとこんなの今だけなのだろうけど、それでもやはり少し嬉しい。


 じっと見ていると再び拳が飛んできそうになったので、私はキッチンへ逃げておかゆをつくることにした。


 春翔くんは春陽くんを気にしつつ、私のすることを少し離れた位置で見ている。見張られているようで、何だか凄く緊張する。



「ハル、さっきより楽そう」


「薬が効いたみたいでよかったね」


「ああ。………正直、お前が家に来るって言った時は“何で?”って思ったけど、俺一人じゃ何もできなかっただろうから、その…、助かった」


 コンロに向かいながら、だんだんと小さくなる言葉を聞く。振り向きたい衝動に駆られたが、また殴られるのは嫌なのでやめておいた。


 コホンとわざとらしく咳払いをし、春翔くんは話を変える。



「そういえばお前、昼食べた?」


「ううん。まだ」


「じゃあ食べて行けよ。つっても、カップ麺くらいしかねーけど」


「いいの? あ、じゃあついでだし、私が何かつくろうか?」


「材料何もないけど」



 春翔くんの言う通り、冷蔵庫の中は空だった。本当に空っぽ。普通何もないと言っても多少何かあるものだから、逆に変な感動まで覚えてしまう。



「いつも何を食べてるの?」


「カップ麺とか、コンビニ弁当、あと出前。親いないし、飽きたら玲か王子の家で食べさせてもらう」



 平然と言う春翔くんに、私は言葉を詰まらせる。


 親がいないという言葉に、どんな意味が含まれているのかは分からない。けれど、そんな食生活が健康によいとは思えない。



「私、材料買って来るよ。何が食べたい?」


「気遣うなよ。よけいなお世話」


「私がつくりたいの! 何がいい?」



 私が珍しく譲らない姿勢を見せたため、春翔くんは虚をつかれたような顔をする。そして彼らしくもなく私から目をそらし、ポツリと言った。



「…じゃあ、カレー」




「よし、完成!」


「おおー!」



 部屋にカレーの匂いが充満する中、春翔くんが鍋を覗き込んで歓声を上げる。



「すげー! お前料理上手いんだな!」


「普通だよ。いつもつくってるから慣れてるだけ」



 早速お皿にご飯をつごうとすると、「ちょっと待った!」とさえぎられた。



「俺の分はいい」


「え?」


「ハルが元気になったら明日にでも食べる。ハルはおかゆなのに、俺だけカレー食べるわけにはいかねーだろ。お前だけ食べろよ」


「でも、」


「いいからっ」



 もう一時を過ぎていてお腹がすいているはずなのに、春翔くんは断固として食べようとしない。


 お言葉に甘えて自分の分だけをよそうと、しっかり手を合わせて口に運んだ。



「…おいしい」


「だろ?」



 私が言うと、当然とばかりに笑う春翔くん。


 これ、私がつくったんだけどな。だけど、やはり双子は、こうして調子よく笑っているのが似合っている。


 ぼんやりと春翔くんの顔を見ていると、ふとピアスをしていない耳に目が止まった。今朝はそんな暇がなかったのだろう。いつもなら青いピアスがあるはずの左耳を見て、新鮮だなと思った。


 そして何気なく右耳を見て、私は食べる手を止める。右耳にも、穴が開いている。


 そのことが少し気になったものの、私が尋ねるより先に春翔くんが口を開いた。



「そういやお前、弟いたよな」


「え、うん。奏汰かなたっていうの。今中学三年生」


「ふーん。叶美が姉とか想像できねー」


「なっ、それはどういう…」


「でも、料理できるのはいいよな。そうだお前、今日から俺達の家政婦になれよ。そうしたら一日中こき使えるじゃん」


「遠慮させていただきます」



 双子と朝から夜まで一緒なんて、私の身がもたない。丁重に断ると、春翔くんはケラケラ笑う。



「ま、俺にはハルだけで十分だけどさ。これまでだって二人だけで暮らしてきたし」


「ずっと、二人だけで?」


「ああ。父さんは最初からいないし、母さんもずっと入院してるから」


「そう、なんだ…」



 これは、私が聞いてもいい話だったのだろうか。春翔くんが何でもないことのように明るく告げるから、謝るのも違う気がする。


 私は目を伏せ、ずっと疑問に思っていたことをきいてみる。



「今日…、」


「ん?」


「今日、もしも私と偶然会わなかったら、どうしてたの?」


「…どうだろ。たぶんどうしていいか分からずに、ハルの目が覚めるのを待ってたんじゃないかな。俺、ハルがいないと何もできないからさ」


「誰かに連絡してみたらよかったんじゃないの? 玲さんとか、王子さんに」



 普通に思いついてもおかしくないのに、春翔くんは驚いた顔をして言った。



「そっか。そうすればよかったのか。全然気づかなかった」



 ―――何となく、分かった。玲さんが言っていた、双子の欠陥。


 ずっと二人で暮らしてきたために生まれた欠陥。言うなれば、他者と二人の間を隔てる壁だ。


 今日みたいに一人でどうにもならないことがあっても、春翔くんは誰かに頼るという選択肢を思いつかなかった。私に電話した時に、言ってくれればよかったのに。


 一度気づいてしまうと、玲さんが二人を心配する気持ちがよく分かった。


 そしてこういう、無意識のうちに培われた思考回路は、そう簡単に変えることはできない。


 押し黙った私に、春翔くんは不思議そうな顔をする。



「どうした?」


「あの、春翔くん…。これからたまに、ご飯をつくりに来てもいいかな?」


「は?」



 私は、何を言っているのだろうか。奏汰が聞いていたら、間違いなく“お人よし”と言われるような提案を、私はしている。


 けれどこれは決して偽善などではなく、ましてや同情でもない。



「ご、ごちそうさまでした!」



 唖然としている春翔くんの方を見ずに、私は手早く食器を洗い帰る準備をする。自分の荷物を持ち玄関に行くと、我に返った春翔くんが追いかけてきた。



「おい叶美、ちょっと待てよ」


「春陽くんが起きたら、おかゆ温め直して食べさせてあげてね! あと、何か困ったことがあったら、いつでも私に連絡していいから!」



 「お邪魔しました!」と頭を下げ、私は逃げるように外に出た。バタンと閉まったドアが再び開くことはなく、私はほっとしてコーポをあとにした。




―――――

―――


 バタンと玄関のドアが閉まる音がして、春陽は目を覚ました。見慣れた天井を見つめながら、そういえば急に気分が悪くなって倒れたんだっけ、とぼんやり思う。


 重い頭に手を当て上半身を起こすと、春翔の姿が見えなかった。


 ふと指が触れた額には、生温い温度になった冷却シートが貼られている。枕元には薬局の袋と薬の箱が転がっていて、春陽はいぶかしげに眉をひそめた。



「…あ、ハル! 目が覚めたのか!」



 キッチンの方から現れた春翔は、起き上っている春陽を見るなり駆け寄ってくる。感極まったのか、半ばタックルのように飛びつかれ、身体が痛い。



「ハル…。ハルが看病してくれたのか?」


「ああ、薬局に行ったら偶然叶美に会って。それで、ついさっきまでいたんだけど」


「いたって、ここに?」



 家に連れて来たのかと驚くと、春翔は事の詳細をざっくりと説明した。



「だから俺も、叶美を連れて来るつもりなんてなかったんだけどさ。看病手伝ってくれるって言うから」


「へー、あいつが…」


「でさ、なんとカレーまでつくってくれたんだぜ? あ、お腹すいてるだろ? おかゆ持って来ようか?」



 春陽の返答も聞かずに、春翔はキッチンへと向かって行く。


 目に見えて機嫌のいい春翔を見て、ずいぶん心配をかけてしまったのだろうと思った。


 キッチンから、久しぶりに嗅ぐカレーの匂いが漂ってくる。それをつくったという人物を思い浮かべ、春陽は「今度会ったら、いつもより優しくしてやるか…」とつぶやいた。


 自分が倒れて取り乱したであろう春翔を、ここまで元気にしてくれたのだから。



「ほら、いっぱい食べろよ!」



 春翔が持って来たお椀には、山盛りのおかゆがよそわれていた。病み上がりにはきつい量だ。けれど、春陽は文句を言わず食べ始めた。


 横に座り込んだ春翔も早々におかゆを口に運んでいて、二人同時に口を開いた。



「「うまい」」


「おお、予想以上!」


「あいつ、料理上手できたのか」



 誰かの手料理を食べたのは本当に久しぶりで、二人して感動の声を上げる。あっという間に空になったお椀を見て、春陽は妙な感覚を覚えた。


 それが何なのか理解できないでいる内に、春翔が告げる。



「叶美って、いいやつだよな」


「何だよ突然」


「前からバカがつくお人よしだとは思ってたけどさー」



 何かを思い出しているのか、春翔はにやにやと頬を緩めている。それに僅かな苛立ちを感じ、春陽は言う。



「正真正銘、バカがつくお人よしだろ?」


「ハハッ、そうなんだけど。玲とはまた違うタイプのお節介というかさ。悪く言えばうざいんだけど。俺、ちょっと本気で気に入ったかも」


「気に入った、か…」



 楽しそうな春翔を横目に、春陽は胸騒ぎを感じていた。


 どうして、と問われれば答えられない。けれど、どこかでこの会話がおもしろくないと思っている自分がいる。


 とにかく現時点で明確に分かるのは、春翔がこの数時間で、叶美に対してこれまで以上の好意を持つようになったということだ。



「―――気分、悪い…」



 小さくこぼすと、春翔が「大丈夫か?」と顔を覗き込んでくる。


 鏡に映る自分を見ているような錯覚。そして、それほどまでに似ている自分達への安心感。


 ―――大丈夫だ。それは誰に向けた言葉だったのか。


 「もうちょっと寝る」とだけ言い、春陽は横になって目を閉じた。


 全ては熱が引き起こした杞憂なのだと、自分に言い聞かせるように。