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第七話 お隣さんと寝起きドッキリ

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「あ~…あっという間に連休も終わっちゃった…」


 連休明けの朝。学校へ着くなり第一声がこれである。


 本当に何もなかったな…ゴールデンウィーク中。青春の一ページを作ることなく本当に…


「灯~!!おっはよ~!!」


「奈々ちゃん、おはよ。元気だね?」


「灯は元気ないね?どうした?」


 連休明けの奈々ちゃんは相変わらず可愛らしく元気いっぱいパワフルだ。羨ましい。


「じゃ~ん!!見て見て~!!新しいスマホケース買っちゃった!」


「可愛い~!!いいなぁ!わたしも変えたくなっちゃったよ…けど高いんだよねぇ…」


「うんうん!手帳型とか結構するよね。灯は画面傷つけそうだからその型じゃないと嫌なんだっけ?」


「うん。この前スマホ落として画面バキバキに割れた人見ちゃって…それ以来怖くてさぁ~!」


「わかるわかる!びっくりするよねぇ~!?でも灯もやりそう…」


「う、うん…良く落とすし…。幸い丈夫なものだから今のところ無事だけど…それに大抵蒼が受け止めてくれるし…」


 本当に…。反射神経どれだけ良いのかと言いたくなるくらいわたしのスマホ落下瞬時の素早い対応…わたしは自分のスマホまで蒼に面倒を見られていた。


 ストラップも付けたいけど『お前絶対引きちぎってなくしたり画面傷つけるからやめとけ』と言われた。大きなお世話だ。


「あれからどう?何か進展あった?」


「ん?何が??」


「雛森君!何かあった!?」


「はぁ~…奈々ちゃん、いくら恋したい彼氏欲しいわたしでも蒼に妄想するほど重症じゃないよ…」


「ちっが~う!!そんなの知ってる!あたしが言ってるのは駒井の事!!あれから何か仕掛けてきた?」


「え?ああ…」


 それならそうと初めから言ってくれれば良いのに…


「別に特に何もないよ?」


「本当?店とかに来なかった?」


「うん。というか蒼も部活で毎日店手伝えないし…駒井さんも部活出た方が蒼と会えるし…」


「そ、そうね…確かに…」


 奈々ちゃんは相変わらず駒井さんがわたしに何か攻撃を仕掛けてくると思い込んでいるみたいだ。


 心配しなくてもわたしみたいな地味女相手にしないって…駒井さん。そこら辺のゴミ屑にも思えないと思う。


「朝来た時上履きなかったとか、中に画鋲が入ってたりとかしなかった!?不幸の手紙類の物とか入ってたりとか…」


「ないって!ほら、上履きもちゃんと履いてるし中に何かあったら今頃蒼に保健室へ連行されてるよ…手紙があったらこんなのほほんとしていられないし…」


「そのようね…確かにいつもの灯だ…それにいつもの…あれ?そう言えば雛森君は?」


 いつも隣の席でぼんやりしている蒼の姿がないことに気づき、奈々ちゃんは首を傾げた。わたしは無言でグラウンドを指さした。


「ああ、朝練ね…うわぁ~…駒井媚びまくり!引くわ~…イラつくわ~…」


 グラウンドではちょうど陸上部の朝練が終了したところらしい。見れば確かに駒井さんは蒼にタオルを差し出し嬉しそうに話している。


 そしてそんな美少女に笑顔で話しかけられても涼しい顔でスタスタ歩き続けている蒼って…なんか駒井さんが気の毒に思えてきたんだけど。


「蒼ってホモじゃないって聞いたけど…本当かな?」


「は?あんたいきなり何言い出すの?」


「だってさ!駒井さんみたいな美少女そうそういないよ?なのにあの態度って…まぁ、あの性格だから群がるより遠くから見守る女子が多いけど…ラブレターもらっても全然だし。あいつ本当に異性に興味あるのかな?」


「…あるかないかって言ったら…無さそうだよね。」


「でしょ!?だらか本当心配なんだよね…あのまま無駄に顔が良いまま年取ってお嫁さんもらい損ねるんじゃないかって…はぁ…なんか口に出したら本当に不安になって来た!」


「…いや、灯が思う以上に雛森君はあんたの事心配してると思うけど…もらい損ねて困ってたらあんたが嫁になってやればいいじゃん。」


「え!?なんで!?嫌だよ!!わたし、もっとにこやかで爽やかな優しさ溢れる王子様が理想だもん!結婚適齢期が来たら自然とそういう人が現れて、幸せな家庭を持つ予定だもん!!」


「…痛い子ねぇ…相変わらずメルヘン妄想全開か!?その夢見がちな性格いい加減治しなって!あんたが行き遅れて泣くはめになるよ?」


「そ、そんな事ないもん!!」


「…はいはい。でもあたし、灯と雛森君てお似合いだと思うけどなぁ…いい感じでバランス取れてるって言うの?絶対幸せになれると思う!」


「奈々ちゃんはわたしと蒼にどうなって欲しいの?」


 あまりにも自信ありげにそんな事を言うので、奈々ちゃんのせいでちょっと妄想仕掛けそうになった。


 蒼と付き合う…う~ん…なんかそれっていつもと変わらない感じがする…。


「…想像出来ない…やっぱり近くに居すぎると相手の大切さが分からないっていうあれかなぁ…」


「灯はもっと雛森君に感謝しなよ…」


「う~ん…してるんだよ?一応…」


 そんな他愛のない会話を奈々ちゃんとしていると、蒼が日向君と一緒に教室へ戻って来たようだ。日向君の騒がしい声が耳に入り嫌でも気づいた。


「杏ちゃんマジ可愛いよなぁ~!!お前の事好きなんじゃねーの?あれ絶対そうだって!!」


「…興味ない。」


「だよなぁ!?蒼にはあかりんがいるし…はぁ~!!俺もあんな可愛い子に迫られたい!!」


「…夏は灯みたいな女が好きなのか?」


「は?なんであかりんが出てくるんんだよ?」


「さっき『あんな可愛い子に迫られたい』と言っただろ?」


「はぁ!?それは杏ちゃんみたいなってことだよ!!まぁ、あかりんでも俺はいいけど…」


「誰でもいいのか?いい加減な男だな…」


「誰でもよくねーよ!!あかりんだって普通に見りゃ可愛いだろ?奈々ちんでもいいけど!」


「…誰でもいいんじゃないか?それって結局…」


 と、珍しく異性の話で盛り上がっている(日向君が一方的に)二人を見て、奈々ちゃんとわたしは揃ってため息を吐いた。勿論日向君に対して。


 本当お調子者だな…日向君は。普通に見れば可愛いって聞こえた時にはちょっとびっくりしたけど…


「あかり~ん!!俺と蒼ならどっちが好み??」


「へ?」


 昼休み、トイレから出ると日向君に突然そんなことを聞かれ手にしていたハンカチを落としてしまった。


 日向君…いきなり何言い出すんだろう?まさか!?今朝言っていたことがまんざらじゃなくてわたしにこんなことを!?


「いやさぁ…あいつやっぱ顔いいじゃん?それと並んでる俺って女子にどう見られてるのかなぁって気になってさぁ!そんでイケメン好きのあかりんに聞いてみたんだけど…」


「あ、ああ…そんな事…。いや、別にいいけど…」


 だよね…わたしの夢見がちさん…


「俺そんな酷い?」


「いや、そんな事ないよ?普通かな…でも笑った顔は結構好きかも…」


「マジ!?俺の笑顔そんな魅力的!?」


「い、いや!それはあくまでわたしの意見だから!!」


「じゃあ蒼の笑顔とどっちがきゅんと来る?」


「…日向君。蒼の笑顔なんて見たことあるの?」


「…ごめん、ありません…」


「けど…そうだな…蒼みたいな男の子がある時急に笑顔を見せたらきゅんと来るよね…」


「あ、確かに!俺でもときめきそう…。見知らぬ彼の一面を見ましたって奴!?」


「そう!!少女漫画によくある展開!!」


「うぉ~!!なんだそれ~!!俺もされてみて~!!」


「なら少女漫画読んでみる?」


「え!?マジで!?貸して貸して!!」


 こうして、わたしは何故か日向君に漫画を貸すことになった。代わりにわたしは彼から少年漫画を借りることになった。


 意外なところで気が合ったな…凄い盛り上がって昼休み中話してたし…


 少し嬉しくなってその日は気分が良かった。家に帰ってから手頃な少女漫画を選びながらずっとワクワクしていた。それは勿論恋ではなく、何というか同士みたいな特別な感情だった。


「そんなに楽しいのか?それ?」


 夕飯が済み、わたしの部屋を訪れた蒼はワクワクしながら少女漫画を選ぶ姿を見ていつもの様に無表情に尋ねた。


 珍しいな…これに蒼が興味を示すなんて…。やっぱり友達の影響か?それとも…


「蒼…一応聞くけど…」


「ん?」


 本棚から適当に漫画を取り出し読み始めた蒼に、わたしは思い切って聞いてみた。


 女の子に興味がないってことは…そしていきなり少女漫画に興味を持つってことは…


 まさか…まさか…!?


「蒼って日向君の事好きなの?」


「…ああ、まあな…嫌いだったら一緒にはいない。」


「え!?」


「あいつは正直だし嘘もつかない…それに余計な気も使わなくて良いから一緒にいて楽だ…」


「ええ!?」


「お前だって同じじゃないのか?葉月の事好きだろ?」


「ええ!?何でそうなるの!?そりゃ奈々ちゃんは好きだけど…大事な友達としてで!というかわたしにそっちの気はないし!!」


「…そっちの気?お前は友達として夏の事が好きかと聞いたんだろ?何を動揺してる?」


「…あ、ああ…なんだそっち…ちょっと残念…」


「何がだ?」


「じゃあ蒼はわたしの事も…」


「好きだけど…普通に…」


「ええ!?」


「前も言ったはずだ…嫌いなら十三年間も一緒にいないって。」


「…あ、ああ…そういう意味でか…だよね…」


「他に何の意味がある?」


「な、何も無い!!わ、わたしもう寝るから!!」


「…宿題やってないだろ?教えてやるからちゃんとやることやってから寝ろ。」


 ああ…もう!!本当蒼って訳がわからない!何を考えてるのか本当に分からない!!思った事をそのまま口に出す癖どうにかして欲しい!!


 あ~!!もう!!本当何なの?この幼馴染み!!


 頭を抱え叫びたくなったが、蒼が淡々と宿題の準備をしだしたので仕方なくそれを堪え取り組むことになった。


 この日に限って苦手な数学の課題…泣けてくる…!!



「…ん?」


 翌朝、カーテンの隙間から漏れる朝日で目を覚ました…


 いつもはベッドの上で目を覚ますはずなのに、この日は何故か部屋のテーブルで目覚める。


 目の前に広がるのは…泣く泣く完成させた宿題と…散らばる筆記用具と…


「え!?」


 ガバッと身を起こし、一気に目が覚めた。


 宿題と一緒に眠る見慣れた姿…。サラサラの黒髪が顔に掛かり気持ち良さそうに寝息を立てている。


 って…なんで蒼がここに!?わたしと一緒に寝てたってこと!?こ、この状況は一体…??


 動揺しパニくりながらわたしは蒼との距離を取った。ドアに背中をくっつけるくらい…。


 えっと…確かあの後宿題をして、やっぱり蒼に説明して教えてもらって…何度目かも分からない同じ説明をようやく理解して泣いて泣いて…


「…ん?」


 あ、起きた…


 ようやくお目覚めの蒼は、眠そうに目を擦りながらゆっくり身を起こした。変な寝方をしたせいか凝ったのだろう…肩なんか回している。


 親父臭いな…顔に似合わず本当…


「…そうか、あのままここで寝たのか…」


「…そ、そうかって…」


「灯?何故そんなところにいる?そしてそんな目で見るな…心当たりないぞ?」


 そうでしょうとも…ええ、あんたはそうだ。幼馴染みとは言え、同い年の男女が一緒の部屋で一夜を明かしたって事実に何の動揺も感じないだろうよ…


 けど…この少女漫画なら何か一悶着ありそうなこのシチュエーション!今まさにその状態にあるわたしにとっては平常心ではいられないわけで…


「俺は一度家に戻る…お前もさっさと支度しておけよ?」


 ガチャッ…


 何事もなかったかのように起き上がり部屋を出る…


 そ、それだけ??他に何か言うことないの??


 い、いや…何もないんだから言う必要もないのか…


 けど…けど…


「…あ~!!もう!!なんでこんな動揺してるんだろう…わたし…」


 蒼なんか意識する必要もない。それは蒼も一緒で、だから蒼のリアクションが普通なわけで…


 なのに…なんでこんなに心臓がバクバクしてるんだろう?蒼相手に…