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第十話 お隣さんは真っ正直者

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「花森~!!」


「…あ。」


 昼休み、トイレから出てくると何故か水城君が立っていた。


 相変わらず彼もイケメンさんである。蒼とはちょっとタイプは違うけど、こう爽やかなスポーツ少年って感じで良い。


「な、何?」


 しかし、わたしは人見知り。いきなりグイグイと迫られるのは怖いのだ。初対面の時と言い…ちょっと警戒してしまう。勿論イケメンなので少しは舞い上がっているけど。


「そんな怖がるなよ。俺お前に何かしたか?」


「…いや、別に…」


「だろ?俺はただお友達になりたいだけだって!」


「な、なんで?」


「あの雛森と普通に話せる女子だから。お前の話聞いててさ、凄い興味あったし…あいつが好き好んで世話焼いてる女がどんな奴なのかってさ。」


「…こんな人間です。じゃ、じゃあ…」


「待てって!逃げるなよ!!」


 足早に立ち去ろうとした瞬間腕を掴まれ、ハンカチを落としてしまった…。しかも意外と力強い。


 な、何だろう…何か怖い…


「…って怒鳴ったら余計怖いよな…悪い…」


「…何か用なの?」


 腕を握る力を緩め、水城君は急に気まずそうにそう言うので逃げるタイミングを失ってしまった。手を振りほどくタイミングも…


「だから、本当に仲良くなりたかったんだって。前は雛森に邪魔されちゃったし…あの後『あまりあいつを怖がらすな』って釘刺されてさぁ。すっげー過保護なのな。」


「…蒼そんな事言ったの?」


 恥ずかしいやら腹立たしいやら…。やっぱり蒼は幼馴染みと言うよりは世話焼きのお父さんに近い。


「…で、単刀直入に聞くけどさ。雛森と付き合ってんの?」


「は!?なんで!?」


「だっていつも一緒にいるし…登下校も一緒だし、昼も一緒に飯食ってるだろ?何度か見かけた事あるから。」


「だ、だからってなんでそうなるの!?あ、ありえない…わたしにはいつか素敵な王子様が現れて迎えに来てくれる予定なの!!んな不愛想な仏頂面男じゃなくて…もっとこうキラキラ爽やかな…」


「…お前痛いって言われるだろ?」


「な、何でそれを!?こ、これに関しては譲れないから…何とでも言って…」


 いけないいけない…思わず妄想の扉が開きそうになっちゃった…。メルヘンワールド禁止!しっかり鍵かけとかないと!!


 呆れてどこか可愛そうな人間でも見るような目を向ける水城君…完全に引かれたな。これ…。


「面白いな、花森って。何か俺結構好きになれそうかも!」


「…え?」


「良く見れば結構可愛いし、俺小柄な女の子好きだし。あ!良かったら付き合う?お前雛森の事なんとも思ってないんだろ?」


「ええ!?」


 な、何なの…?いきなり付き合うって…?わたしが水城君と?あ、ありえない!!


 この展開って…やっぱり少女漫画にはよくあるもので…。


 い、いや!でも!!それはあくまで作り話の中の話であって現実じゃ…


「あれ~?水城君?」


 戸惑いパニックになっていると聞き覚えのある声がした。


 気づけばそこには駒井さん!?ゆるふわヘアは今日はツインテールに結ばれていて相変わらず可愛い。


「あ~!!花森さんだよね~!?杏奈会いたかったんだぁ!!」


「え?あ、はぁ…」


「嬉し~!!雛森君から話は聞いてるよ~?幼馴染みなんでしょ?」


 わたしに気づいた駒井さんは、意外にも友好的だった。嬉しそうに駆け寄り腕なんか組んできて…


 か、可愛い…同性だけどドキドキする…


「でもぉ…葉月さんには気を付けた方が良いよぉ?あの子可愛いけど何するか分かんないしぃ…杏奈心配~!!」


「…別に奈々ちゃんはそんなんじゃ…」


「てか駒井!邪魔すんなよなぁ…俺今大事な話してたんだって!!」


 ああ、そっか水城君…


 駒井さんの登場に忘れそうになってた…帰ってくれても良かったのに。


「え?何何~!?もしかしてぇ…告白~!?可愛いもんねぇ、花森さん!」


「そうだよ、告白!てか今口説いてたとこなんだけど…」


「きゃー!!うっそぉ~!!で?花森さんは??やっぱ水城君恰好良いし付き合っちゃうよねぇ!!」


 腕を組んだまま、駒井さんは目をキラキラさせながらわたしの顔を覗き込んだ。


 ハイテンションだな…駒井さん…。


「えっと…それは…」


 水城君は確かにイケメンだ。それに多分悪い人ではない…と思う。駒井さんは分からないけど。


 でも…いきなり付き合うって事になるのは…


 考えているとふと今朝の蒼の様子が脳裏に浮かんできた。


 笑顔は見れなかったけど珍しく楽しそうで、わたしのくだらない顔芸(?)がツボになり必死で笑いを堪える姿…あの時の気持ち…


 わたしは思ってしまったのだ。もっと蒼の楽しそうな姿を見たいって…


 でもこの気持ちが恋なのか…友情なのか…それは分からない。特別な感情にも種類は沢山あるのだから。


 でも…わたしは…


「ご、ごめんなさい…」


 無意識のうちにそんな言葉が口をついていた…


 頭を下げたまま、水城君と駒井さん…二人の顔がまともに見れなかった。


「…灯?こんなところで何をして…」


 げっ…凄いタイミングで現れた…!?


 わたしの帰りが遅いから心配して探しに来たのであろう…振り返れば蒼が立っていた。


 勿論…いつもの無表情で…


 え??


「…水城、灯に何かしたのか?」


 ええ!?何この展開!?


 水城君の姿を捉えると、蒼はわたしの肩を引き寄せ微かに険しい目つきになっていた。


 お、怒ってる…?何で?


 わたしが頭なんか下げているから勘違いしたのかな??


「何でそうなるんだよ?」


「何となくだ…言ったはずだ、灯を怖がらせるような事をするなって…」


「…そんな事してないって。ただちょっと付き合ってくださいってお願いしただけで…な?駒井?」


「…そうなのか?」


 いつの間にかあたしから腕を離していた駒井さんは笑顔で頷く…。


「そうだよぉ?でも振られちゃったんだよねぇ~?」


「うっせ…」


「…でもぉ、杏奈はお似合いだと思うけどなぁ…」


「駒井、ちょっとお前黙れって…まぁ、振られたのは事実だけど…。雛森は何でそんな心配してるわけ?花森の幼馴染みってだけでそんな過保護になるの可笑しいだろ?好きなの?」


 み、水城君…!!なんて難しい質問をこの人にするの!?


 ああ…蒼も考え込んじゃって…


 真面目な表情の水城君と蒼…それを興味深そうに見守る駒井さん…と内心動揺しまくるわたし…


 もう…なんでまたややこしい事になってるの?


 逃げたい…!!


 けど蒼にまだ肩を引き寄せられたままなので身動きが取れない…


 ああ、もう!!


「…俺が灯の心配をするのも面倒を見るのも全部俺が好きでやっていることだ。灯が幼馴染みだからとかそんなんじゃない…俺がそうしたいからしているだけだ。それが可笑しいことなのか?」


「え?い、いや…そんな真面目な顔して言われると…」


「あと…好きかと聞いたな?嫌いな人間の為にこんな面倒臭い事を好んですると思うか?お前はそれが出来るのか?」


「え?いや…無理だと思うけど…」


 暫く考えてから、蒼は冷静に淡々とそう答え始めたので…水城君は何も言えない様子だった。


 蒼の言葉はいつだってこう真っすぐで真実だけ語る。だから…その言葉に嘘偽りは無いのだろうけど…


 けどこれって…


「お、お前ってなんでいつも淡々とストレートにしか言えないんだよ…まぁ、俺はそこ好きだけど…。ちょっとは動揺とかしろよ、つまんねーな…」


 そう!そうだ!!ちょっとは戸惑ったりしてくれたって良いじゃない!!表情一つ変えずに淡々とそんな言葉言って…


「…何か聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるんだよ。真っすぐ過ぎて…」


「…俺は嘘は付けない。面倒くさい。」


「知ってるよ!だから余計恥ずかしいんだよ!!」


 水城君が顔を赤くしながらそう突っ込むと、蒼は不思議そうに首を傾げて見つめ返した。


 キョトンとしちゃって…本当こいつは…


 なんだろ…わたしまで恥ずかしくなって来たかも…


「…まぁ、そういう事なら身を引くしかないよな。雛森とは良い友達でいたいし、花森とも出来れば今後は良い友達として付き合って行きたいし…」


「お前、また何かするつもりじゃ…」


「しねーよ!大事なお姫様に手出したりしないから安心しろよ。」


「姫?誰が?」


「…何でもねーよ!じゃあな、また部活でな…駒井も教室帰るぞ。」


 何故か少し呆れながらも、水城君は苦笑すると駒井さんを無理やり引っ張り教室へと戻って行ったのだった。


 な、何だったんだろう…


「はぁ…お前は目を離すといつもこうだ…」


「は!?何それ!?」


 ため息を一つ。それも凄く深い…。背後からそんな蒼の呆れる様子が感じられた。


「大体蒼が変な脅し掛けるから!水城君それでヤケ起こしたんだよきっと!!」


「お前を守るためにしただけだ…何が悪い?」


「…は?ま、守るって…」


 「…間抜けな顔してないで帰るぞ。腹が減った…」


「わっ!?ちょ、ちょっと!!そんな引っ張らないでよ!」 

 

 肩をしっかり掴まれたまま、わたしは蒼に引きずられるようにして教室へと連行されたのだった。


 守るためって…何その台詞…不意打ちすぎる!!


 何だかまた恥ずかしくて、でも嬉しくて…


 鼓動が激しくなってくる…


 まさかわたし…このまま本当に蒼の事好きになったりしちゃうんじゃ…?


 い、いや!!やっぱり無い!無い無い無い!!




「…駒井、あれは諦めた方がいいぞ。お前の入る余地ねーし…」


 駒井さんを引きずりながら、水城君はぼそっと笑ってそう言った。彼女に聞こえるだけの声で。


「…あんたがもっとしっかり攻めれば花森だって落ちたかもしんないのに…役立たず…」


「…俺はお前に手貸す気はねーよ。ただ本当に気になったから花森にああ言っただけで…」


「うざっ…何なの?あんたに協力してもらわなくても杏奈の事助けてくれる人沢山いるんだから!」


「…はいはい。陰険な手使うなよ…」


「あんたに関係ないし!あの女…絶対雛森君から引き離してやるんだから!!」


 可愛い顔を怒りに歪ませながら、駒井さんは決意新たに拳を握りしめていたとかいなかったとか。


 とにかくこれから一波乱ありそうなことだけは確かなようだ。