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2話

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まさか先生のことを…?

自分の気持ちに唖然あぜんとしていると



「いーじゃん、先生に恋。楽しそう!」



咲は、楽観的に言ってくる。



いや、いやいやいや。

全然良くないでしょう…。


相手は先生だよ?


いわゆる、‘‘禁断の恋” ってやつですよ?

ダメでしょ。絶対、ダメでしょ!



ていうか、そもそも先生なんか好きじゃないし…!





「―――新入生、退場」




長くて暇なはずの入学式も、先生のことを考えていたらあっという間に終わり

参列者に拍手で見送られながら体育館を出た。




みんなの流れに合わせ、教室へ向かっていると



「でも、美羽が恋するなんて久しぶりだね」



咲が昔を思い出すようにつぶやく。



ちょっと!

恋するなんて久しぶりだね…って

もう私が先生に恋してることになってるの?!


咲の発言に焦って何も答えられずにいると

咲はクスクス笑いながら言葉を続けた。



「美羽が恋するなんて、堂島以来じゃないの?」



「ど、堂島…くん…ね」



その名前に、心臓がドキンと音を立てる。




堂島どうじまくんとは、中学の同級生で

2年生の頃、私は堂島くんにぞっこんだった。



だけど、生徒会副会長をしていた優秀な堂島くんは

超が付くほどバカな私なんて眼中になくて

勇気を出して告白したバレンタインデーに


「バカは論外」


とバッサリ振られた。



人生で初めての失恋で、完全に落ち込み、軽くトラウマになっていて

それ以来、何となく臆病になり、恋愛をしてこなかった。





「堂島、顔と頭は良いけど、性格は最悪だったね」



「…ね。バカは論外なんて、もう少し言葉を選んで欲しかったよ…」



「でもそのくらいバッサリ振られる方が、諦め付いて良かったかもよ」




まあ確かに、あまりにもバッサリ振られたから

ある意味スッキリした部分はある…。


だけど、実は今でも少しだけ、堂島くんが気になって―――…



「澤井~」



体育館から移動して、教室へ入る前

背後から、低くて心地良い声が聞こえた。



その声に振り向くと



「ほら、鞄」



先生が、ダルそうに私のバッグを持っていた。



あ、そうだ。


私、先生に預けてたんだっけ…。



バッグを受け取るため先生に近付くと、シトラスの香りが鼻をくすぐり、胸がドキッと高鳴る。




「美羽、顔真っ赤」



咲に笑われても、私は自分の気持ちに戸惑いすぎて、返事をする余裕なんてない…。




こんなにドキドキするなんて

本当に、恋してるみたいじゃん…。



自分の気持ちに焦りを感じるが、咲に行くよと言われて教室へと足を進める。



「そういえば美羽、自分の席知らないよね?」



「あ、うん。遅刻したからね…」



「初日から遅刻とか、レジェンドだよ。美羽の席は私の後ろ~」



「レジェンドって…。澤井と斎藤だと、本当に毎回前後になるね」



「ね~!  今回も間に誰もいなくてラッキー」




私の席は、窓側から3列目の前から4席目。

ちょうど、教室のほぼ真ん中だった。



ここだと、教卓に立つ先生がよーく見える。




「え~、明日からは―――…」



先生は、みんなが席に座ったのを確認したのか、明日の予定を説明し始めたが……



何ともまあ、やる気のない話し方。


片足に体重かけてダルそうに立って

面倒くさそうに喋る。


改めて服装を見ると、とても教師とは思えない。



一応スーツは着ているけど、式が終わった途端

ネクタイを緩めてワイシャツを第2ボタンまで開けて


髪の毛は一応黒いけど、明らかに最近黒染めしましたっていう不自然な感じの黒で

無造作にセットしちゃってるし


香水なのか知らないけど、シトラスの香りまで振りまいちゃってて…。



腕に着けている時計は、妙に高そうで

教師が着けるようなものではない気がするし


さりげなく、耳にはピアスも着いている。



教師ではなく、ホストですと言われた方が、しっくりくる。




「―――ま、そんなところだ」



先生観察をしていると、あっという間にHRが終わった。




やばい、見るのに集中しすぎて何も聞いてなかった…。





「じゃあ、明日は9時からHRだ。それまでに学校こいよ~…特に、澤井な」





………ん?

今、澤井って聞こえたような…。



このクラスに澤井は私だけ…な、はず。

てことは、私のこと?!




「聞いてんのか?  お前だよ澤井。明日は遅刻、するなよ?」



「は、はい…!」



先生に突然名指しで話し掛けたられたせいか…

それとも、好きかも!  なんて思っていたせいか



心臓が壊れるんじゃないかってくらいの速度で、脈が速くなる。




「ちなみに…、朝いなかった澤井のためにもう一度言うが、担任の村瀬優也だ」



「え?!  あ、わ、私は…!  澤井美羽です!!」



ありえない速さでドキドキする胸を抑えながら、精一杯言い返すと




「あははははっ!  ちょっと美羽、何で自己紹介してんの?」



咲が笑いながら言ってくる。





え………?


うわ…やばっ…!!


焦って私まで自己紹介しちゃったよ…。




「ま、間違えました…」




結局、クラスみんなに笑われ

私の高校生活初日が終わった。



「美羽~、帰るよ~」


「あ、うん!」



朝は寝坊して1人で全力疾走した道のりを

帰りは咲と

それから、さっき仲良くなった安村やすむらレミちゃんと歩くことになった。



レミちゃんの第一印象は、美人な子。


清潔感があり、中学卒業したばかりとは思えない、大人っぽい顔立ちで羨ましくなる。


身長もチビな私より10cmくらい高くて、スラッとしている。

ふんわりと巻かれた短いブラウンの髪の毛は、風になびいて揺れていて、思わず触りたくなってしまう。


私が男だったら、こういう女の子と付き合いたいと思うような子だった。


初対面なのにとても話しやすくて意気投合し、帰りの方面が同じだったから一緒に帰ることになった。




「美羽ちゃんて、面白いね?」



レミちゃんが、ふと思い出したように言ってくる。



一体それは、どこを見て言ってるのだろう…。




「…そう?」



「まさか、あそこで自己紹介するとは思わなかった」




そのことか…。



「あれは、思わず…!  名前を言われたから、反射的に私も名前を言っちゃっただけで…。レミちゃんもあるでしょ?  そういう経験」



「ん~…ふふっ。ごめんね、ないかも」



可愛いソプラノボイスで笑いながら言うレミちゃんに



「……うん、だよね」



苦笑いして返事をし、自分の発言を思い出して恥ずかしくなっていると



「レミ、この子相手にしない方がいいよ。今村瀬に恋して、頭パーになってるから」



それまで私とレミちゃんのやり取りを傍観ぼうかんしていた咲が、ポンと爆弾を投下した。




「えーっ?!  そうなの?」




パッチリとした大きな瞳を更に見開き、驚くレミちゃん。

そんな顔をしても美人で、うっとりしてしまう。




…って、うっとりしてる場合じゃない!




「咲ーっ!!  何言ってんの?!」



「あらー?  事実でしょ?」



「違う!  違うよ!  レミちゃん!  違うからね!」



「ふふっ、そうなんだ~…でも、良いと思うよ?  先生と生徒の恋」



「ねー?  何か良いよねえ?」



「レミちゃん!!  咲も、やめてよ!  勘違い!」



必死に否定するも、2人は


「先生と生徒か~。ドラマチック」


とかあれこれ話していて

私の言葉なんて聞いてくれない様子。



「2人とも!  私の話を聞いて!」



「「なーにー?」」



「私は、先生に恋なんてしてません!」



「そうなの?  でも咲ちゃんは確信してるみたいよ?」



「うん、美羽は村瀬に恋してるよ!」




自信満々に言い切る咲に、少し呆れてしまう。

その自信は、一体どこからくるのだろうか…。




「先生と生徒だと、毎日会えるから良いね」



「学校も楽しくなるね~!  羨ましいぞ美羽!」



「ね。こっそりデートの約束したりするのかな?」



「キャーッ!  こっそりとかドキドキしちゃうわ」




咲とレミちゃんが、妄想を膨らませ大盛り上がりして、私は完全に置いてけぼり状態のまま駅に着くと

この駅を利用する学生であふれていた。



「他の高校の子もいるから混んでるね」



「うん、そうだね。神明じんめい学院もここの駅なんでしょ?  って、…あーっ!」




突然、咲が1点を見て大きな声を出した。




「咲、どうしたの?」



「どうしたのって…堂島がいる!!」



ど、堂島…って…

もしかして、私が振られた堂島くん…?



どこ?  と咲に聞こうとすると

私よりも先に



「あ、本当だ!  あらたくんだ」



レミちゃんが、口を開いた。



え、新くん…?

新くんって、堂島くんのことだよね…?


レミちゃんと堂島くん、知り合いなの?


…ていうか

新くんなんて呼ぶような間柄なの…?



予想外のことに、唖然としていると



「新くーん!」



レミちゃんは、嬉しそうに手を振りながら堂島くんを呼んだ。



「よう、レミ」



その声に反応した堂島くんは、私たち……

には見向きもせず、一直線にレミちゃんへ駆け寄る。





レミちゃんと堂島くん、どういう関係…?



私のことなんてチラリとも見ず、レミちゃんと楽しそうに話す堂島くんを見ていると

胸に何かがグサリと刺さったような感じがした。