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4話

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―――時刻は午前3時…


「ね、眠れない…」



昼間のお兄ちゃんとの会話のせいで私の頭の中は、村瀬むらせ先生でいっぱいになっていた。


お母さんは、夜勤だから夕飯を食べると出掛けてしまい

お兄ちゃんは大学の友だちと遊びに行っているから、家には1人きり。


こういうときに、1人きりだと気を紛らわせることができなくて村瀬先生のことばかり考えてしまう…。


私、村瀬先生のこと…好きなのかな?

いやでも、相手は教師。しかも、何歳年上なのよ…。

例え好きだとしても、ダメでしょう…。


自問自答を繰り返しているうちに、もうすぐ夜が明けてしまう。

さすがに2日続けて遅刻なんて絶対にダメだ!  と思い、まぶたを閉じるけど、やっぱり村瀬先生の顔が浮かんでくる。


私、頭がおかしくなったのかもしれない。



結局、この日はなかなか寝付けず寝始めたのは、恐らく6時過ぎ…。

深い眠りに着く前に



美羽みう、学校遅刻すんじゃねえの?」



朝帰りをしたお兄ちゃんの声に起こされた。







「やっばーっ!  遅刻しちゃうよお…!!」






澤井美羽さわいみう

高校生活2日目

本日も、高校までの道のりを全力疾走しております。



お兄ちゃんに起こされたのは、家を出ないといけない時間の15分前。


華の女子高生が、15分で支度できるわけもなく、今日も遅刻しそうだった。


それでも、自慢の脚力でかなり時間を縮めてギリギリ間に合うと思ったのに…




―――キーンコーンカーンコーン…


あと少しで校門というところでHR開始を知らせるチャイムと、ガラガラガラ…と、校門を閉める音が聞こえてくる。

閉めているのは、本日もチャラい身なりの村瀬先生。

とってもダルそうに、ゆっくりと校門を閉めている。




「あーっ!!  村瀬先生ーーっ!  待ってー!!」



この際、恥ずかしさは捨てよう。


門が閉まったら、走った努力が水の泡だし2日連続で遅刻なんて、絶対にダメだ。

それに、ここに村瀬先生がいるということは、もしかしたらセーフかもしれない。

先生より先に教室にいれば、遅刻にならないだろう。



「…澤井、また遅刻か」



私に気付いた村瀬先生は、眉間みけんにシワを寄せ呆れたように言う。

校門を閉める村瀬先生の手が止まった隙に、スルッと村瀬先生の脇をすり抜け校内へ入った。



「っはあ、はあ…ま、間に合ったーっ!」


「…バカ野郎、間に合ってねえよ」



肩で息しながらガッツポーズをすると後ろからコツンと頭を突かれる。



「え?  間に合ってますよね!  HRが始まる前に、教室に入ればセーフ的な、暗黙のルールありますよね?」


「残念だな。もう教室ではHR始まってる」


「………へ?」


「副担任つーのがいてだな、俺が校門閉める日は、そいつが朝のHRやるんだよ」




なんということでしょう…。そんな話、私は聞いていない。


「ふ、副担任って…そんなの聞いてない…昨日いなかったですよね?」


「あ?  昨日紹介したじゃねえか…って、澤井は遅刻でいなかったなぁ」


クククッと笑う村瀬先生は、私を追い抜かし校舎へと入って行く。


私としたことが…昨日の遅刻のツケがここで回ってきた。


村瀬先生のあとを追い、教室へ行くと本当にHRは始まっていてがっくりと肩を落とす私を見て、村瀬先生は、またクククッと意地悪く笑う。


思わずその笑顔にキュンとしてしまう私は、本当に頭がやばイかもしれない。

バカにされて笑われているのに、なんでキュンキュンしちゃってるのよ…。



HRが終わり短い休憩時間のあと、校内見学のためすぐに移動となった。



「はあ…疲れたのにまた動くのか~」


「疲れたのは自分が寝坊したせいでしょ。ほら、行くよ」



呆れているさきに腕を引っ張られながら校内を見て回る。だけど、とーっても退屈だ。


だいたい、学校の校内なんてどこも似たり寄ったりで、説明されなくてもわかる。

丁寧に1つ1つ説明している副担任の言葉なんて、右から左へ流していた。

隣にいる咲は、さっきから校内の見取り図を見つめ、一生懸命サボれる場所を探している。



「よし! ここだ!」


「サボり場所、決まったの?」


「この空き教室!」


指差す場所は、A棟4階の教室。


「ここ、空き教室なの?」


「イエス! この階はどの教室も使われてないって、さっきハゲの副担任が言ってた!」



副担任の話を右から左へと受け流していた私とは違い、意外にもしっかり聞いていた咲に驚いた。


ちゃっかりしてる…。絶対に聞いてないと思ったのに。

しかも、ハゲの副担任って…聞こえてたら絶対に怒られるよ。


蛍光灯の光に反射して、ピカッと輝く副担任の頭を見つめた。


「よし、下見に行こう」


張り切って言う咲に腕を引っ張られ、クラスの輪から抜け出した。



「ここだー!」


他愛もない話をしながら歩いていると、あっという間に、空き教室の前に着いた。

そこは、本当に使われていないみたいで扉の小窓から中を覗くと、埃が溜まってるのが見えた。


「ねえ、ここって鍵開いてるの?」


あんなに埃が溜まってるということは、閉まってるんじゃないかなあ…


案の定


「ゲッ、開いてないし」


鍵は開いてなかった。


「もー! せっかく良いとこ見つけたと思ったのにな~」


廊下に座り込み嘆いていた咲は、再び校内の見取り図を見始めた。


すると…


「あ、やば! 誰かくる!」


微かに、足音が聞こえる。



その足音は、確実にこちらへと向かってきていてサボりがバレるのはマズイと判断した私と咲は、どこか隠れるところがないか辺りを見渡す。

でも残念なことに、この階に隠れる場所なんてなくて



「澤井、斎藤さいとう…2日目からサボるとは、良い度胸してんじゃねえか」


「「…ゲッ」」



ニヒルな笑みを浮かべた、村瀬先生に見つかった。


よりによって、村瀬先生に見つかるなんて…最悪だ。



「「ごめんなさい」」


きっと、今私の顔はとても引きつってると思う。そのくらい、村瀬先生の表情が不気味で怖い…。


「サボる場所でも探してんのか?」


ゆっくり、ゆっくりと近付く村瀬先生は、私にターゲットを決めたのか獲物を捕らえようとするライオンみたいな目付きで私をジッと見つめる。

その目付きと雰囲気があまりにも怖くて村瀬先生の歩く速度に合わせて私はゆっくり、ゆっくりと後退する。

だけど、すぐに背中に壁が当たり村瀬先生に追い詰められてしまった。




「澤井、昨日今日と遅刻で、挙句あげくてにサボるのか?」


まるで、逃がさないぞと言わんばかりにトン…と、私の顔の真横にある壁に、村瀬先生は手を置いた。


ちょ、ちょっと!これってもしかして……

壁ドン?!

えっ、何で?!



「え、えっと…」



何で私は、壁ドンされてるのでしょうか。



「高校に何しにきてんだ?」


背の高い村瀬先生の壁ドンは、妙に圧迫感があって少し怖いけどふわりと、シトラスの香りが鼻をかすめこの壁ドンされてる状況と相まって私の心臓は口から飛び出そうなほど、ドキドキしていた。



「遊びてえなら、くるんじゃねえよ」


村瀬先生の言うことは、ごもっとも。だけど、それよりもこの状況に頭がショート寸前で、村瀬先生の言葉なんてほとんど耳に入らない。


「っ、あ、あのっ」


どうして壁ドンしてるんですか? と聞こうとしたとき

スッと横にあった手が壁から離れシトラスの香りも遠ざかった。



「マジで、面倒くせえんだよ」


「………へ?」



村瀬先生を見ると、少し離れてポケットに手を突っ込んでダルそうに立っている。



「サボりとか遅刻とか、俺が学年主任にぐちぐち言われんだよ」



廊下の窓から外を見ながら、うんざりしたように話す村瀬先生。こんなときなのに、その姿に胸がキュンとする。


イケメンは、どんな姿も絵になるなあ…。



「何にも悪くもねえ俺が文句言われるんだぜ。おかしいだろ?」


「…は、はあ…」


「お前らがサボったり遅刻したりすると、俺が主任に文句言われてストレス溜まるんだよ。ハゲたら責任取ってくれんのかよ、澤井」


「…む、無理です…」


「だろ? 責任取れねえよな? だから、あまり俺に迷惑掛かるようなことすんじゃねえよ」


「は、はい…」



私が微妙な返事をすると、村瀬先生はゆっくりと、きた道を引き返し始めた。

村瀬先生の後ろ姿をポカンと見つめていると



「B棟5階の空き教室」



先生がポツリと呟いた。



B棟5階の空き教室……?



「そこなら鍵は掛かってねえ。サボるならそこにしろ」


「「…は?」」



待って、ちょっと冷静になろう…。


さっき村瀬先生、サボったり遅刻したりして俺に迷惑を掛けるなって言わなかった?

なのに、サボれる場所を教えるの?




…ダメだ。全然理解できない。

この人、教師で合ってるよね?



「な、何かよくわからないけど…とりあえずB棟の5階行ってみよう」



咲もイマイチ理解できてないみたいだがそれでも一応村瀬先生の言ってたB棟の5階に行くらしく、歩き始める。



「てか、壁ドンされちゃってたね?」



ドキッ…!!



「あ~! 美羽、顔がどんどん赤くなってる~っ!」


「や、やめてよっ! 変なこと思い出させないでっ」


「何でぇ? 何が変なことなのー?」



ケラケラ笑いながら私をからかう咲は随分と楽しそうだけど私は、全然楽しくない!

咲のせいで、さっきのことを思い出してしまい自分でも顔の熱さがわかってしまう。


「美羽、いい加減認めちゃいなよ」


「認めるって、何を…?」


「だーかーらー! 村瀬のことが好きだってことをだよ」


「認めるも何も、好きじゃないもん」


「ふーん…。じゃあどうして、村瀬のことを考えるとドキドキしちゃうのかなあ?」


「っ! な、何言ってんの?!」


「今日遅刻したのは、村瀬のことを考えてたら寝付けなくて寝坊…かな?」


「ブッ!! ゲホッゲホッ…っはあ?!」


「図星だな」


「た、確かにそうだけど…!  でも、それと好きとは別だから!」


「あのね、美羽ちゃん」


「何よ」


「それを人は恋と呼ぶんだよ…?」


「…っ! わ、わかってるけど…」



自分の気持ちくらい、自分が一番よくわかってる。だけど、先生に恋なんて、絶対にダメだよ。




***




「あ、ここだ」


話していると、あっという間に着いたB棟の5階。

村瀬先生の言う通り、本当に鍵は開いていてすんなり中へ入ることができた。



「思ってたより綺麗だね。誰か掃除してるのかな」



咲の言う通り、さっきの空き教室と同じように埃だらけだと思っていたけど埃は溜まっておらず、綺麗だった。




「で?  その気持ちは認めないわけ?」



お互い、少し離れた机に腰掛けたところで再び咲がさっきの話を持ち出してくる。



「またそれ…?   認めないし!」


「いいじゃん、村瀬。イケメンだし、ちょっとチャラそうだけど悪いヤツではなさそうだし」


「そうじゃなくて、先生と生徒とかあり得ないでしょ?」


「何があり得ないの?」


「禁断じゃん、そんなの…。それに、報われない恋はしたくないっていうか…」



恋をして傷付くのは、もう嫌…。先生に恋なんて、傷付くことが目に見えている。



「恋なんて傷付いてナンボ! 当たって砕けるもんだよ」


「そうだけど、できれば私のことを好きって言ってくれる人と付き合いたいもん…」


「じゃあ、村瀬が告白してきたらそれにはOKする?」


「そりゃ、まあ…」


「ほら、やっぱり好きなんじゃん」


「…え?」


「好きじゃなかったら、OKしないでしょ」


「それは、想像の話っていうか…」


「想像でも、OKすると思うってことは、少なからず気持ちがあるってことだよ。好きでもない男に告白されたら、想像でも断るって言うはずだよ」


「そう、かな…」


「そうよ。認めなさい。その方がラクだよ」



認めた方がラク…。


その通りかもしれない。好きなの?  いや好きじゃないと自問自答を繰り返して

好きになったらダメだと、自分の気持ちを押し殺すよりも認めてしまった方がラクかもしれない。


村瀬先生を見ると、ドキドキしてしまう。村瀬先生のシトラスの香りに、ドキドキしてしまう。

昨日、お兄ちゃんに「好きな人がいるな」と言われたとき頭に浮かんだのは、村瀬先生だった。


これを、恋してないと言うには無理がある。




「…私、村瀬先生のこと…好き、かも…」



ポツリと言葉に出すと胸に突っ掛かっていたものがスーッと消えたような気がした。



「ヒヒッ、ようやく認めたな!」



イタズラな笑みを浮かべる咲は



「良いねー、先生と生徒の恋!   全力で応援するから!」


と、楽しそうに言った。





澤井美羽

高校生活2日目




ついに、人生2度目の恋をした―――





…かもしれません。