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5話

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結局、2日目は帰りのHRまで空き教室で過ごした。


教室へ戻ったとき、村瀬むらせ先生に何か言われるかな?  とビクビクしていたが

怒られることはなく、何も言われなくて拍子抜けした。




―――翌日




「おい、美羽みう。起きろよ」




さすがに3日続けて遅刻はヤバイと感じ、お兄ちゃんに起こしてくれるよう頼んだおかげで、今日は時間通りに起きられた。



高校生活3日目にして、初めて予定通りの電車に乗れて、走らずに学校まで行ける。


当たり前のことが出来てなかったから

今日は妙に気分が良かったが…



昨日も遅刻したから、私は知らなかった。




校門に群がる女子生徒たち。

そして、校舎の窓から身を乗り出しキャーキャー騒ぐ。




何だこれは…。



最初、有名人でもいるのかと思ったけど

校門にいるのは、村瀬先生だ。


そして、キャーキャー騒ぐ声をよく聞くと


「村瀬せんせーっ!」


とか


「かっこいーっ!」


とか、叫んでいる。




村瀬先生ってアイドルみたい…。




本人は、驚く様子もなく平然としていて


「早く教室行けよ、うぜえな~」


と、笑いながら女子生徒と話していた。




そりゃそうか。

あれだけかっこよければ、騒がれることなんて慣れてるのだろう。


それに、他の先生も驚いたり注意したりしてないってことは

多分、これがこの高校の日常なんだ。



村瀬先生の人気ぶりに少しテンションが下がったが、あんなにかっこよかったら仕方ないと自分に言い聞かせて教室へと向かった。



「あ、美羽ちゃん!  おはよう」



「んっ!  さすがに、今日は遅刻しなかったか」



教室へ入ると、今日も変わらず美しいレミちゃんと、パンを頬張るさきがいた。



「2人とも、おはよ~」



「ん?  何か美羽ちゃん元気ない?」



「え?  そんなことないけど…ビックリしちゃった」



「ビックリ?  あ、村瀬先生の人気ぶり?」



「そう。2人とも知ってた?」



「私たちも、昨日驚いたよ。最初芸能人でもいるのかと思っちゃった。ね?  咲ちゃん」 



「あんな人気なんだね~村瀬」




席に座ると、少し遠いけど校門が見えて

先ほどと変わらず、村瀬先生に群がる生徒の姿が目に入る。



ボーッと眺めていると



「…あっ」



1人の生徒が何かにつまずいたのか、転びそうになったのが見えた。



「…えっ」



そして、その生徒を村瀬先生が受け止める。




まるで、昨日の私と村瀬先生…。

いや、同じシチュエーションだけど、少し違う。


村瀬先生とその女子生徒は、すごく楽しそうに話している。

きっと転んだ子を、村瀬先生がからかってるんだ。


私のときとは、違う…。

村瀬先生のあんな笑顔、見たことない。



なんだ、そっか…。



別に、昨日村瀬先生に受け止められて変な勘違いをしたわけじゃない。


あれは事故だってわかってる。


ただ、事故とはいえ、人気の村瀬先生に抱き締められたことで

みんなよりも少し上だと錯覚して、舞い上がっていた。




村瀬先生に抱き締められたのが、私だけじゃないと思うと

何だか、無性に悲しくなった―――





「ねえ美羽~……って、えぇ?!  何で泣いてんの?」



「…うぅ…わか、んない」



「どうしたどうした~、この数分に何があった」



「うぅ…ヒック…」



「美羽ちゃん、どうしたの?  お腹痛いの?」



「いやいや、レミ。さすがに美羽もそのくらいじゃ泣かないでしょ~」



「だ、だよねぇ…どうしちゃったの~」




心配する2人に、大丈夫と伝えたいけど

涙が邪魔をして言えない。




どうしようもなく、悲しくて

他の生徒と楽しそうにしているのが嫌で

村瀬先生が他の子にも同じことをするのも嫌で

涙がどんどん溢れてしまう。




―――キーンコーンカーンコーン…




HR開始のチャイムが鳴ると

レミちゃんは席へと戻り



「席座れ~、HR始めるぞ~」



村瀬先生が教室へと入ってくる。

チラリと村瀬先生を見ると



「…っ!」



バッチリ、目が合ってしまった…。



泣き顔を見られるなんて、最悪すぎる!




「え~っと、今日は―――…」




村瀬先生は、私を見ると一瞬驚いたような顔をしたけど

そのまま前を向いて何ごともなかったようにHRを開始した。



村瀬先生を見ると、さっきの光景を思い出して、また涙が溢れてくる…。


あれも、私と同じく事故だってわかっているけど、すっごく嫌で、モヤモヤする…。



いろんなことを考えていると、あっという間に終わるHR。

一応涙は止まったけど、私の心は晴れなかった。




「美羽、着替えに行こ~。この後身体測定だってさ」



「身体測定?  わー、やだなあ…」



「美羽チビだもんねー」



「あー!  すぐチビって言わないでよ」



何も聞いてこない咲とレミちゃんは

きっと私が泣いた理由が何となくわかってるんだと思う。



ジャージに着替えて体育館へ行くと、村瀬先生が身長を測るらしく、また気分が落ちた。 



チビなんて見た目でわかる。

でも、ハッキリ数字がでるのと、見た目で何となく想像するのとでは大違いだ。



乙女心ってやつかな?

村瀬先生に、身長がバレるの恥ずかしい…。



スラッと背の高い咲や、レミちゃんに比べて

10センチくらい小さい私は

身長が最大のコンプレックス。


体重がバレるよりも、嫌だ。





「村瀬!  私、何センチ?」



「村瀬先生だろ。162センチ」



「わー…伸びてるし…!」



「はいはい、良かったな」



「はー?  全然良くないんですけどっ!」



「わかったからさっさと退け。次、澤井さわい




だけど、どんなに嫌だと思っても、残念ながら順番は回ってきてしまう。


身長が伸びて残念そうな咲をこっそり睨んで、重い足を動かす。



身長計に立つと、村瀬先生から香るシトラスの匂いが鼻をかすめ、ドキッと胸が高鳴った。




「澤井は…153センチ」



153…。

小学6年生から、毎年聞いてるその数字。




「…はあ」



少しくらい伸びたかな…?  と、期待したのに相変わらずな数字で

あからさまに溜息を吐くと、頭上からクククッと楽しそうな笑い声が聞こえてきた。 



もちろん、笑ってるのは村瀬先生だ。




「何、笑ってるんですか…」



「澤井…、小せえな」



「なっ…!」



「俺と30センチも違うのか」



「そっ、それは!  村瀬先生がでかいだけですよ!」



「お前が小さいだけだろ」



「ひっ、酷いっ!」



「ほら、あとがつかえるからさっさと体重測ってこいよ」




クククッと楽しそうに笑い、私を軽く押して早く行けと言う村瀬先生。



村瀬先生に触られた背中が、熱い…。

ドキドキと鼓動が速くなり、顔に熱が集まるのがわかる。


恥ずかしさと鼓動の速まりを誤魔化すために、小走りで体重測定へと向かうと



「ヒヒヒッ、なーに村瀬とイチャコラしてんのよ」




楽しそうに咲が笑っていた。




「いっ、イチャコラなんて!  してないよ!」



「そー?  端から見ればイチャコラしてるように見えましたけど?  顔真っ赤にしちゃってさ」



「っ…!」



「良いですねえ。初々しいですねえ」



「咲ーっ!  やめてよ!」



「どうですか?  先生への恋は。楽しいですか?」



「もーっ!  からかわないで!」



「ヒヒヒッ。はいはい。わかりましたよー」




そのあと、体重を測り終え教室へ戻ると

レミちゃんにもからかわれた。


2人にからかわれて嫌だと思う反面、嬉しいと思う気持ちもある。


あれだけで、朝見た光景なんてすっかり忘れてしまい

私の気分は最高潮に達していた。


村瀬先生の言動で一喜一憂して、心が振り回される。


少し疲れるけど、何だか心がポカポカして、幸せだった。




「美羽ちゃん、村瀬先生のこと大好きだね?」



「…え?!  …うん、そうかも」



「おーっ?  何か美羽が素直になってきた!」



「べ、別に…!  そんなんじゃないけど…」



ただ、本当にそう思っただけ。

堂島くんのときよりも、好きという気持ちが大きい気がする。



「これから、楽しみだねー」



「私、全力で応援するからね!  美羽ちゃん!」



「私もーっ!  ようやく美羽が恋愛して、私は嬉しいぞ!」




心強い味方が2人もいる、私の恋愛。


先生に恋なんてダメだと思っていたけど

ちょっと良いかも…と思えてきた。



「わ、私…頑張る!」



「おー!  いいぞー!  その調子だ美羽!」



「頑張れ!  美羽ちゃん!」





澤井  美羽


高校生活3日目


村瀬先生への恋を、頑張ると決めました。